専門医インタビュー企画~その道のり、苦難、得られるものとは~小林哲也先生

今回、専門医の先生へのインタビュー企画ということで、日本人初で米国獣医内科学専門医を取得された小林哲也先生にお話を伺いました。 “がんを診るのではなく、患者を診る”が座右の銘の小林先生。インタビューの中でも、「一人でも多くの飼い主と動物を助ける」という理念の強さ、その重要性を語っていただきました。 豊富な経験をもたれる先生から専門医を取得されるまでの体験、獣医師としての人生の計画など、幅広いお話を聞くことができました。 〇プロフィール ・所属・役職 公益財団法人 日本小動物医療センター付属 日本小動物がんセンター センター長 米国獣医内科学専門医(腫瘍学) アジア獣医内科学専門医(小動物) 日本獣医がん臨床研究グループ(JVCOG)代表理事 日本獣医学専門医奨学金基金(JFVSS)代表理事 ねこ医学会(JSFM),日本動物病院協会(JAHA)学術理事 ・経歴 1969年埼玉県生まれ 1994年日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)畜産学部獣医学科卒業 パデュー大学での臨床研修、ノースカロライナ州立大学獣医学部腫瘍科レジデント課程、同大学修士課程修了 2001年日本人初米国獣医内科学専門医(腫瘍学)認定 日本獣医生命科学大学講師 2004年日本小動物がんセンター センター長就任 2015年アジア獣医内科学専門医(小動物)認定 ・所属学会 米国獣医内科学会 米国獣医がん研究会 日本獣医がん学会 日本臨床腫瘍学会 日本癌治療学会 ・著書・監修書籍 著書 猫の「がん」~正しく知って、向き合う (ねこねっこ 2021/10/22出版) 監修 ここからはじめる 犬と猫の臨床診断学 (緑書房 2020/2/14出版) 〇専門医について 米国獣医専門医にも様々な領域の専門医があり、内科学は病理学、放射線学、外科学に続き、1972年に設立されました。この内科学専門医のなかにも、小動物一般内科学、大動物一般内科学、腫瘍学、神経病学、心臓病学の分科会をもちます。 専門医の数は、人数が増えれば増えるほどトレーニングできる人が増えるために指数関数的に急増しています。ですが、まだ日本人の専門医取得数は多いとはいえず、言語や経済的な問題などそのハードルの高さが原因となっています。小林先生も日本獣医専門医奨学金基金*の代表として後進の育成に尽力されています。 *日本獣医学専門医奨学金基金(JFVSS) 米国獣医専門医取得を目指す若き獣医師を応援したい!(小林 哲也  JFVSS代表、獣医師、米国獣医内科学専門医(腫瘍学) 2016/12/22 公開) – クラウドファンディング READYFOR (レディーフォー)  JFVSS 公式サイト http://jfvss.jp/ 〇米国獣医専門医になるには まず、一般の理系大学通常4年通い、学士号を取得する必要があります。そこから獣医科大学に入学し、4年間勉強します。この獣医科大学に入学するのもかなりの難関で、一般大学で優秀者でないと入ることができません。というのも、米国では獣医師は社会的地位が高く、人気が高い一方で大学の数も限られているためです。そうして、ここまで8年かけて獣医学士を取得し、獣医師となります。 獣医科大学を出た後、専門医を目指す学生は2つの道がありますが、一般的にはかかる年数が短いこともあり、インターンが選ばれるそうです。このインターンでは、1年間臨床現場で救急、内科、外科を全般的に学びます。短く感じるかもしれませんが、先生いわくこの期間がかなり厳しいようで、獣医師としてだけでなく、人間としても大きく成長できた1年だったそうです。 通常の日中勤務に加え、夜間救急をインターン生で回さなければならなく、昼夜問わず、ずっと働いていたそうです。夜勤体制はその病院によって異なり、週に一回以上通常勤務に加えて回ってくるシステムや、5~6週間のサイクルで夜勤が回ってくるシステムなどがあります。いつ病院に呼び出されるかわからず、肉体的にも精神的にもきつく、シャワーが立って浴びられないほどだったそうです。こうした夜間救急の経験から、病院からの呼び出し音の電子音が嫌になり、帰国後も携帯電話を1年間もてなかったほどだったと話されることからも、専門医への道のりの厳しさが伝わってきます。 このインターンプログラムが始まってまもなく、マッチングプログラムに臨みます。マッチングプログラムは、レジデントを受ける側と提供する側が希望を出し合い、コンピューターによって候補者を順位付けするシステムです。https://www.virmp.org/  もともとかなりの競争率ですが、特に外科や眼科など人気な分野では倍率が100倍を超えることもあるそうです。レジデントで3年学び、各分科会ごとに規定の基準をクリア、そして一般内科試験と最終試験の両方に合格すれば、ようやく専門医になることができます。 〇インタビュー(獣医師の人生設計について) 局員:「先生はどうしてアメリカでの専門医の資格を取ろうとおもわれたのでしょうか?」 […]