アフリカの野生動物を治療するということは?
アフリカゾウの涙の滝田明日香先生および宇野獣医科医院の宇野哲安先生にご講演いただきました!アフリカと日本それぞれにおける野生動物との関わり方を学ぶことができるイベントとなりました。
アフリカゾウの涙×IVSA-J対面イベント開催

ご講演者の紹介
滝田明日香先生
ケニアのマライサラ国立保護区マラコンサーバーシーで獣医師として17年間勤務されていた。アフリカゾウの涙の創立者・共同代表として現在も新たな野生動物保護活動を続けられている。

宇野哲安先生
宇野獣医科病院の医院長で、長年アフリカゾウの涙のご支援をなさってきた。

タイムテーブル
13:00-14:00 滝田先生のご講演:野生動物の治療について
14:00-15:00 グループワーク:自分が野生動物獣医師だったら、どう対応するのかグループに分かれて考えました
15:00-16:00 宇野先生のご講演:国内の野生動物保護の現状
16:00-16:30 質疑応答
主催者に聞いた!イベントの見どころ
第一線で活躍されている滝田先生の野生動物獣医師としての野生動物保護・治療の考え方、長年小動物の診療に関わっている宇野先生目線での野生動物保護の考え方を伺えたところです。
野生動物について多角的な視点を聞けただけでなく、グループワークを通して実際に野生動物獣医師だったらどう対応するのかを自分で考えることで野生動物保護についての理解が深まりました。
ご講演内容を一部ご紹介!
滝田先生のご講演
野生動物の治療の実際の様子や具体的な方法について貴重なお話を伺うことができました。
通報を受けてから治療を終えるまでの流れを実際の映像を交えて聞くことができました。
まず通報を受けたら野生動物の治療を行うかどうか、獣医師が判断しなければなりません。
そもそも治療を行うことは野生動物にとってストレスであり、治療を行うために麻酔をかけることでかえって動物を傷つけてしまうことも少なくありません。
麻酔については、麻酔をかけられる年齢かどうかや、麻酔をかけた後起きるまでに夜になってしまわないか、麻酔から起きて立ち上がるための体力があるような全身状態なのかといったことも考慮する必要があります。
また、その動物を助けるには薬剤や人手など沢山のコストが生じます。コストをかけて野生動物を助けることでそれを上回るメリットが得られるのか、見極めて治療することも必要となります。
こういった一連の判断は獣医師が全て行うため、動物の生態学から薬剤の動態といった獣医学的なことまで幅広い知識と経験を必要とします。
治療の判断ができたら動物に麻酔を打って、追い込んで保定します。
具体的に使用しているダートガンや薬剤の種類・使用容量も併せてご講演いただきました。
保定については、最小限で行うことがベストであり、少ない時間・人数で済ませるのがプロなのだそうです。
追い込む段階での地形についても事前によく考え、どこで麻酔を打ってどう追い込めば良いのか、全て獣医師が計画するそうです。
また、滝田先生が実際に経験した珍しい症例についてもご紹介いただきました。聞いたことのないような話や映像が沢山あって非常に興味深いものでした!
ご講演の後に、グループに分かれ、バッファロー、ハゲワシ、チーター、ライオンの4つについてそれぞれ起こりうる獣医学的問題、治療の難しさ、獣医師としてどう関わるかについてディスカッションを行いました。それぞれの動物で考えるポイントが色々あって、多角的な視点からそれぞれの動物と向き合ってどうするべきなのか考えていく必要があると感じました。参加者の方々の意見も様々な視点があって非常に良い議論ができたのではないかと感じました。
宇野先生のご講演
日本の野生動物と人との関わり方についてご講演いただきました。
野生動物の食物資源は現在乏しく、養っていくための環境が日本は不十分であるそうです。そのため、今後野生動物と人との関わり方を考えていくことは必要不可欠なことであるでしょう。
皆さんは目の前に怪我をした野生動物がいたらどうしますか?可哀そうで助けてあげたいと考えるかもしれません。
しかし、日本では今多くの野生動物が環境に対して過剰な状態であり、多くの野生動物について積極的な治療は推奨されません。
読者のあなたがもし獣医師なら、治療を行うにあたり、関連法規や、治療を行うコスト、そして治療を行った場合の周囲への影響といった、様々なリスクについて考慮する必要があります。
ケニアで行われているような野生動物の保護や獣医師の治療業務は、ケニアの野生動物が希少で価値があり、観光資源として外貨になるから成り立っていることであり、日本でも同じようなことができるとは限りません。日本の場合は特に、シカやイノシシといった個体数が過剰になってしまっている野生動物による影響の方が大きいといえるでしょう。
宇野先生は、目の前の動物を助けることも大事だが、もっと大きな視点で治療を行うかどうか、可哀想だからではなく本当に治療が必要なのかどうか、しっかり判断できる人々が増えていってほしいと強くお話されていました。
イベント運営メンバーからの感想
イベントに参加し、野生動物獣医師や野生動物保護の実際の様子を動画や写真で拝見させていただき、貴重な経験になりました。滝田先生のアフリカでの豊富な経験を伺えて興味深かったです。
また、宇野先生からは今後どのようなマインドで野生動物について獣医師として考えていくべきか、のお話が印象的でした。先生方とお話する機会もあり、とても勉強になった上、楽しかったです。
