ウガンダでの野生動物保護 加藤夕貴 さん
加藤 夕貴 さん
・2022年3月 東京農工大学農学部共同獣医学科(未来疫学研究センター 所属) 卒業
・2022年11月 青年海外協力隊としてウガンダ派遣
JICA海外協力隊としてウガンダに派遣されるまでの道のり
私はアフリカの野生動物に関わりたいとずっと思っていました。ただ、日本からだと難しく就職活動において悩んでいました。そんな時にJICA海外協力隊としてタンザニアに派遣されていた先輩のお話を聞き、当時JICAで野生動物関係の求人があることを知りました。そこで、JICA海外協力隊に応募し、4-6 月は岩手にてJICAの研修プログラムに参加しました。主に動物とは無関係のマーケティングや広報、漁師さんのお手伝いなどを行っていましたが、合間を縫って動物クイズや動物を知ってみようというようなコーナーを担当していました。7-9 月は福島にて派遣前訓練に参加し、11 月ウガンダへ。もうすぐで 1 年になります。
ウガンダ派遣当初はカルチャーショックに悩まされた
気候も過ごしやすいし、ご飯も美味しいです。現地の人たちはとても温かく、みんな家族という感じで何かあると親身になって話を聞いてくれたりするのでとても過ごしやすいです。その反面、ウガンダの人は時間や約束を守ることをしないので、日本人にとってはそこでストレスが溜まったり、悩まされたりすると思います。ですが、私は気になったことをいちいちストレスに感じていると大変なので諦めざるを得ないと思っています。その上でどうやって自分のメンタルやモチベーションを保ち続けるかという点で人間性を磨かせてもらっていると思っています。
ウガンダでの仕事
ウガンダではゴミ問題が深刻で、「動物とゴミ」に焦点を当てたもので子供達を教育しています。教育するにあたって絵本や展示物があると教育しやすいし、子供の印象に残りやすいだろうと色々試行錯誤をしています。ウガンダの動物園では、エデュケーターという職種の方が全部口頭で説明しており、展示物がないためその説明用の展示も作っています。そもそもこの職種に応募したのは、臨床として野生動物を救ったところでそれは目の前の動物一頭を救うことになるかも知れないけれど、教育を通じて、人々の意識を変えることで長期的に見てもっと動物のことを救うことになるのではないか?と思ったからです。そして一頭、一種類の動物に限らず、もっと多くの動物、世界中の動物のためになることではないかと考えました。理想的な考えですし、実際の成果など目に見えづらいところではありますが、少しでも何かの考え方や行動の変化につながればと思って活動しています。
仕事のやりがい
クイズや園内の展示物は子供達が実際に触ってくれていたり、ご両親や先生が自分の展示物を使って子供たちに説明しているところを見たりするとうれしくなるし、同僚が展示物の評判について教えてくれるとやはり手応えがあります。これに関しては日本もウガンダもあまり変わらないなと思っています。同僚も私が来てからとてもモチベーションが上がり、ユウキがやるなら自分もやりたいと言って、今までやりたくてもやっていなかったことなどもどんどん一緒にやろうと声をかけてくれます。私は思いつかないけど現地の人だからこそ思いつくようなこととか、お互いに相乗効果でいい仕事ができていると思います。
2023年の目標「動物図鑑」
今年1年間の目標を何個か立てようと思った時に思いついたことの一つが動物図鑑でした。本屋さんにも動物図鑑はたくさんありますが、私からするとアカデミックすぎて、普通の人たちが手に取るには堅いと思っています。そこで色々な人に動物のことを知ってもらいたい、興味を持って欲しいという思いから自分の納得がいく動物図鑑を作ってみようと思いました。まず自分の配属先である野生動物保護センターで保護されている動物を紹介するところから始めました。もうすぐ全種類が終わるので、次は動物園の近くで見られる動物やウガンダに関わりのある動物を紹介しようと思っています。
ウガンダで様々な活動をする中で上手くいかなかった時のリフレッシュ法
同僚に愚痴を聞いてもらったり、日本にいる家族や友達に電話して話を聞いてもらったり、ちょっと美味しいものを食べに行ったりしています。
他の日本人の協力隊の人との交流
私の仕事と関係のある職種の人には手伝いに来てもらったり、手伝いに行っていたりします。基本的に一つの配属先に派遣されるのは1人なので日常は1人が多いです。イベントなどで月に一回ほど会ったりもしています。
残りの一年は仲間との時間を大事にしたい
何か残したいという気持ちもありますが、今だけ過ごせるこの時間を大切にしたいという気持ちが大きいです。仲間との時間を大切にするためにもできることを一緒にしたりとか、やりたいと言ってくれたことに応えていきたいです。
任期が終了しても野生動物に関わり続けたい
場所や職種にこだわらないけど、野生動物に関わり続けたいです。もしアフリカで獣医師をするのであれば、アフリカの獣医師免許を取らなくてはならないですね。また、いつまでこのような仕事ができるのかという部分もあるため、時間をかけて考えていきたいです。
獣医学生へ
獣医はとても狭い世界で、新しいことに挑戦することが難しいです。私みたいに、それこそそういうことしたいなと思っていても、仕事がないとか、仕事があったところでお金にならないとか色々と問題があったりします。例えば、臨床とか公務員に行くにしても、やりたいことは別にあるという人もいると思います。今までの経験者、教授、先輩の獣医師さんとかは、もしかしたらそんなことは無理だと言ったり、難しいとか言うかもしれないけれど、自分がやりたいことがもしあるのであれば、挑戦してみて欲しいです。私は今獣医師の資格は取ったけれど、獣医らしくないことをしていて、ですが、やはり子供の時からの夢を間接的に叶えている今が楽しいし、充実しています。過去に自分が「野生動物に関わりたいんです」っていう話を教授にした時に「難しいよ」と言われたりとか、「そんなものないよ」って言われたり。その後、協力隊に行くという話をした時にも「新卒でそんなとこ行って、何ができるの。」など結構言われたりしましたが、やはり自分の人生の責任を取れるのは自分だけ。結局何年何十年一緒にいなきゃいけないのは自分自身。周りの人たちはアドバイスをくれるかもしれないけれど、やはり自分が納得できる道を人と違っても、選ぶといいんじゃないかなと思いました。だから私はとりあえずウガンダに行って、やりたいことやってみて、それで病んでしまったり、「あ、なんか思ってたのと違った」となったらそれはそれで1個の経験になるからいいやと思っていました。経験した上で失敗したとか上手くいかないとかは全然納得できるし良いのですが、やりたいことに挑戦もしないで諦めちゃうのは、自分的に納得ができなくてもったいないし、何より自分が後悔してしまうのではないかと思います。あまり獣医という枠とか既存の概念にとらわれずに、色々挑戦して欲しいです。もっといろんなことをする獣医さんが出てきていいと思っています。私が獣医師らしからぬ活動をしているので、どこまで参考になるかわからないですけどね笑。人と違う進路を誰かが行きたいなって思っている時に、私みたいな人もいる、こんな新卒でウガンダに行っちゃうような人もいるんだぞっていうことを、背中を押せる存在になれればいいなと思っています。
インタビューを終えて
X(旧Twitter)での夕貴さんの動物図鑑を拝見し、そこからウガンダでの活動日記などとても興味深く、もっと知りたいと思いインタビューをお願いすることにしました。インタビューを通して、ウガンダでの活動ややりがいや苦労などを知ることができて良かったです。最後のお話の中で、「自分の人生の責任を取れるのは自分だけ。自分が納得できる道を人と違っても選ぶといい」という言葉にとても感銘を受けました。将来を考える上で、もし普通とは違う道を選んでも選ばなくても、自分が納得がいくような人生を歩めるように励んでいきたいなと思います。
最後に夕貴さんに貴重な機会を頂戴しましたこと、この場を借りて心より御礼申し上げます。
Originally posted 2023-10-18 08:07:13.